第一列伝
剛田 岳人
ごうだ たけと
『麺道一徹』主宰
年間六百杯。スープの一滴に、職人の人生を読む男。
第一の列伝に記すのは、ブログ「麺道一徹」を十五年書き続ける剛田岳人である。昭和四十八年、埼玉県川口の生まれ。鋳物工場の並ぶ街に育ち、高校の部活帰りに食った一杯の中華そばが、人生の方向を決めた。以来、印刷会社の営業として都内を回りながら、昼休みと退勤後の時間をすべて麺に捧げている。
その記録は「執念」の一語に尽きる。年間六百杯、十五年で延べ九千杯超。だが、ただ数を誇る男ではない。一杯ごとに麺の加水率、スープの炊き出し、店主の修業の来歴までを調べ上げ、淡々と、しかし熱く書き留めていく。営業鞄には方眼ノートが一冊。スープを一口含んでは、店に断ってから短く書く。それが彼の取材のすべてである。
「麺道一徹」が読者に信頼される理由は、貶さないことだ。口に合わなかった店のことは書かない。書かれた店はすべて、彼が「もう一度行く」と決めた店である。だから読者は安心して暖簾をくぐれる。店主たちが「剛田さんが来た」と背筋を伸ばすという話も、あながち誇張ではないらしい。
特筆すべきは製麺所への眼差しである。店だけでなく、麺がどこから来たのかを追う。老舗製麺所から郊外の自家製麺まで、その系譜を辿る連載「麺の血脈」は、もはや一都市の食文化の記録と呼んでいい。行列の目安、営業時間の変更、駐車場の有無まで律儀に追記される実用情報の正確さも、長年の読者が離れない理由のひとつだ。
休日の朝は、開店前の行列に黙って並ぶ。替え玉は頼まない。スープは半分でやめる。医者にそう言われているからで、本人いわく「九千杯のための妥協」である。「ただ好きなだけですよ」と笑うが、十五年間ほとんど休まず更新され続けた記録の山が、その言葉の重みを物語っている。
- 屋号
- 『麺道一徹』
- 得意ジャンル
- ラーメン・つけ麺
- 活動地域
- 東京・埼玉・千葉
- 主な発信
- ブログ「麺道一徹」/X(旧Twitter)
この食客の特徴
- 一、年間約六百杯、十五年で延べ九千杯超の実食記録
- 一、酷評を書かない流儀。掲載店はすべて「再訪を決めた店」のみ
- 一、製麺所の系譜から麺文化を辿る連載「麺の血脈」
- 一、行列の目安・営業時間など実用情報の正確さに定評
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取材に同行した編集部員が驚いたのは、店を出た後の聞き込みの丁寧さだった。語り口は朴訥、記録は精緻。「食客」という言葉が最も似合う男である。